「褒められたい願望」”A desire to be praised”

 客先工場で見た成語を説明します。

隐恶扬善=日本語の意味:人の欠点をかばい長所をほめあげる。

客先社長に確認したところ、業務上、お互いに協力してもらうため、この成語を廊下の掲示板に掲げたということ。その後、会社のスローガンとして定着、現在も継続中。

考察:成語のとおり、中国人の社会では学校、会社でも相手のことを褒め上げる。どこの国の人でも褒められることはいい気分になるが、中国の場合「褒められたい願望」は非常に強いと思う。これでもかというぐらい誇張してほめあげる。それもみんなの前であなたは優秀ですよというふうに。

 これを一年に一回、半年に一回ではなく、2ヶ月、3ヶ月に一回おこなうのである。褒め上げる事自体悪いことでは無い。費用もかからない、それで作業者がメンツを保って仕事に精進してくれれば何も問題無し。

↑子供が通学している中国地元の小学校でも毎月表彰しているらしい。
↑嫁が所属する保険会社では毎月表彰制度を行っている。表彰されて基本給があがるわけではない。

↓会社食堂外の掲示板には10年勤続作業者、優秀作業者が掲示されている。

①一年1回の10年勤続者=>腕時計が支給
②3ヶ月1回の優秀作業者=>300元の奨励金

①②ともに作業者のプライドを褒め上げる制度。
給料についての調整は無いが、景品、奨励金を支給。

 私が以前、日本の学校にいた時、日本国内の会社にいた時、これほど表彰していなかったと思う。つくづく中国人は褒められることが好きな民族だと思う。褒められたい願望は日本人ももちろん持っている。しかし、これほどあからさまにしっかりと褒めてあげないと個人的には納得できないのである。

スッキリ中国論 という本には中国人のメンツに対し、周りから称賛(ほめる)というエネルギーを注入しつづけないとモチベーションがとまってしまうと記載されている。個人的にも納得がいく説明である。

 検証:本に書かれていることが本当かどうか実際に試してみた。

 ●製造会議で私は生産管理課長のしごとぶりを皆の前で褒めちぎった。それも2周続けて褒めちぎった。==>生産管理課長は嬉しそうだった。

 ●会社中国人総経理の学歴を褒めた。(すごい優秀な大学を卒業されているんですね。)==>総経理は嬉しそうに私にこう言いました。私はいい学校をでているから優秀な人間なんです。(会社総経理は冗談を行っているわけではなく、真顔で自分は優秀だと断言している。全く謙虚さがないことに素直に驚く。)

 相手を誉めることについて本当にこころから褒めているのでは無いが、それで相手が気分良くして物事がうまく回っていけばいいとする。

 別件: 隐恶扬善隐恶 については欠点をかばうという意味でとるのか?悪く解釈すると隠蔽体質にもつながるので注意しなければ、ならないと個人的に思います。私個人はこの成語はかなり中国社会を表しているなと感じます。この社会を表現しているからこそ、成語になったんだと思いますが、、、、^_^

 会社内で客先からクレームが来ると真の原因を追求調査しなければなりませんが、原因を追求していく上で、一部の人は自分達のあら捜しをされていると誤解した場合、組織で隠蔽力学が働き、なかなか本当の原因にたどり着けないことがあり、5WHY?(五个为什么?)などができない。特に同一民族同士ではなかなか調査が困難になり、最後に違う民族のわたしが調査することがあります。

 違う民族のわたしの場合、どろどろした人間関係のようなものが全く無いため、外部から見て納得のいく調査ができる場合もあります。

 話は拡大しますが、日産自動車のカルロス・ゴーンさんも最初はこういう感じだったのか? 日本人同士では経営改革が進められない。なぜなら、いろいろな人的しがらみがあり、合理的な判断で意思決定(コストカット)できなかったから? ある意味、同質民族では抜本的な改革ができないから、異質なよそ者の存在が必要なのかもしれない。

 異質なよそ者の存在が必要でも組織で仕事をしている以上、そこに存在する組織文化を尊重することも大事(必要)。尊重することと組織文化に同化することは別問題。100%同化してしまうと異質なよそ者ではなくなってしまう。